僕はあんなに全員が改善するとは本当に思ってなかった。
びっくりしたんですよ!
やっぱりね、データをたたきつけられたのが大きいと思う。
誰がどう見たってこれダメじゃんってハッキリ分かるじゃないですか。
職員の方向けにエコドライブ研究所のエコドライブ安全運転研修を実施していただいた埼玉県環境科学国際センター(CESS)の責任者、松山謙一センター長にお話を伺いました。
Q:研修実施のきっかけは?
A:研修のきっかけは、事故が続いていたこと。
事故はセンターの公用車でも、プライベートの運転でもあった。
実はそれで一度、僕が考える交通安全とか安全運転というのを職員向けにプレゼンしたんですよ。
というのも、CESSの中では運転歴は僕が一番長いんですよ。年がだいぶ上ってこともあるし、年上の人は全然車に乗っていない人で、ずっと乗ってるのは僕だけだったから。
「こういう風にして走ろうよ」とか、「事故はなぜ起こるか」みたいな話を、統計データを示しながら「こういうところに気をつけていこう!」と、やったんですよ。
でもやっぱり起きちゃったんですよね、事故が。
それで「これはもう、きちっとお金を使ってでも本格的にちゃんと安全運転講習を受けなきゃダメだな」って思ったんです。
Q:エコドライブ研究所に依頼した理由は?
A:やりたくなかったのは、おざなりに「DVD見てください~」とか。
もうそういうレベルじゃないだろうって。
それで、誰にどういう風にお願いしようか?と思ったときに「あ、そういえば、エコドライブだ」と。
僕が過去に受けたことのある研修で「エコドライブが安全運転である」とHONDAさん(メーカー系列の研修所)がハッキリとおっしゃっていた。で、僕もそう思っている。
スピードの出し方、考え方、当然エコドライブをすれば安全運転。
自分たちは環境部だし、環境センターだし、エコドライブがベースにあった上での安全運転というのを考えたときに、エコドライブだと。
そのときに立花部長に色々調べてもらって、教習所でそういう講習をやってるところないかな?とか。
それで選択肢のひとつとしてエコドライブ研究所さんに相談しようかっていう話になった。
結構、急だったんですよね。年度内っていう話がどうしてもあったので。
それでも、時間をかけて研修をやってくれるという話があって。そのやり方を聞いたときに、それじゃお願いしようってなりました。
教習所さんとかに聞いてみても企業を相手に安全運転講習ってそんなにやってないんですよね。
特にエコドライブっていうのをあまりやってなくて。
それで、金額的な話っていうのも含めて、同じレベルでやろうとするとお金もかかっちゃうっていう。
Q:実施してみてどうでしたか?
A:びっくりしたんですよ!僕はあんなに全員が改善するとは本当に思ってなかった。
あれって多分やり方が良かったってこともあったし、ハッキリ機械が教えてくれる。
それで、やっぱりああやって順位付けしちゃうと、さすが恥ずかしいからやろうって話にもなるし。本当にびっくりしたんですよ。
Q:研修を受ける前からエコドライブ実践されていたんですね?
A:僕は過去にエコドライブ講習というのを2回受けてるんですよ。
一回は教習所で、もう一回はHONDAさん(メーカー系列の研修所)なんです。
HONDAさんとは環境部の中で色々と一緒に事業をやらせていただいていて、こういうのもありますよっていうことで受けさせていただいた。
そこでもエコドライブはこういうものだって運転の仕方を習って。
やっぱり実践があって、車に乗って隣で教官がこうですって言って運転して。
それもある程度、燃費計の数字も良かったし、及第点っていうかね、こういう感じでやれば大丈夫ですって言われて、それなりに自信があったんです。
自分の車(HONDA S660)で、カタログデータ見たら燃費が21km/lくらいのところで、僕は20km/l前後くらいだったから「自分は実際にエコドライブできてるんだ」って思ってました。
ああいう車だし、まずカタログ数値は出ないですからね。
Q:エコドライブ研究所の研修を受けてみてどうでしたか?
A:僕自身もびっくりしたのが、過去に2回エコドライブ研修も受けていたし、そういう意味では僕は自信があった。
でも、最初に順位を出されたとき「当然、自分はベスト3位に入ってる」と思ったら、そうでもないじゃん。。。確かに、ちゃんとできてるところと、そうでもないところがあったけど。
一番引っかかったのは、急加速と急減速。
中でも僕が意外だったのが減速なんですよね。
減速のタイミングが悪いんだっていうことに気がつかせてもらって、そこを変えたら2回目はすんなり良くなった。
それで、どういうことをどういう風にやればいいんだっていうのを気づかされて、いままでの知識にプラスして大きな物が加わったという感じ。
じゃあ普段からこうすればいいんだっていうのが分かって、それを実践しています。
教えてもらった加速をしていって同じ速度でずーっと走って、減速はできる限りゆっくりと。
元々アクセルワークには自信があったんですよ。
オートマチック車に乗るようになってからは、ワンペダルで運転するようになるのが理想だなって思っていたので。
アクセルを微妙にコントロールするっていうのには自信があったし、そういう運転をしつつ、加速の部分と減速の部分をしっかりすれば、エコドライブをしっかりできるっていう意識に変わった。
Q:新たなエコドライブを実践して普段の運転に変化はありましたか?
A:クルージング部分っていうのは元からある程度自信あったんですよね。その通り結果も出たから。
それで、しばらくしたら数字がどんどん上がって燃費計を見るのが楽しくなって。
20(km/l)だったのが22になり、びっくりしたのは24とか26とかって数字が出てくるわけですよ。通勤距離が20kmくらいなんで、燃費を測ると数字が出やすい距離だったのかもしれないけど、本当にこれはすごいね!すごいね!って思った。
研修から1ヶ月も経たないで、その効果が出てきて、こらすげーな!と思っていて。
3月まで研修やってもらって、年度が替わってからだから4月くらいになったある日ね、ふと気がついたことがあって。
僕、音楽が好きで車の中でずっとかけてるんですよね。
でも、「いままで何の曲がかかっているかすら分かってなかったな」っていうことに気がついたんですよ。
「あーいい曲だな」って思いながら聞いて運転していたら、「あっ、そんなこといままで運転していて意識できてなかったな」っていうことに気がついた。
それで、あっ!と思ったのが、講習の中でもおっしゃっていましたよね、経験値として「変わるのはそこだ!」みたいなのを。
エコドライブをやっていることによって、考え方とか気持ちがすごく変わったって。
そこが神髄だっていうのを言われていて「そうか、こういうことなんだ」って。
感覚的にはね、いままで必死こいて運転していたわけですよね。スピードをある程度上げようとして。
だから、スピードを上げるっていうことに意識を集中していたってことと、速度が上がれば当然視界が狭くなってきたり、そこに集中しなければいけないから、他のことが見えなくなってたんですね。
自分ではエコドライブと思っていたことが、それだったんですよね。
それがとれたわけですよ。
エコドライブをきちんとできるようになって。
っで、感覚的にすげーなって思ったのは五感が全然違うのよ。
目で見える物、聞こえる物、それこそ窓を開けていれば風が入ってくるその風の吹き方、五感が研ぎ澄まされてちゃんと運転に集中できている感覚になっているってことにそこで気づいた。
それでまたびっくりしたんですよ。あ、これがそういうことなのかと。
だから、僕はいま相当うまく乗れてるって気がしています。
Q:エコドライブの神髄を知って何か変わりましたか?
A:僕は、前に講義したときに言っちゃったんですけど、元々は
「事故を100%防ぐことは絶対にできなから、少なくとも事故を起こしてしまったときに被害を少なく、なおかつ自分が加害者にならないような運転をするのが正しいんだ」と思っていたのね。
だから、どう運転しても100%事故を防ぐことはできないんだと。
でも、エコドライブをやって五感が研ぎ澄まされた運転をすると、全然大丈夫だっていうことに気がついちゃった。
つまり、どこから車が出てくる、飛び出してくるってこと、あとどこに歩行者が歩いているのか、チャリンコがどうとか、信号がどうとか全部が分かる。
すべて情報として入ってきてる感覚。
「あ、これだったら、まず事故は起きないな」って思えた。
それはごいなと、俺すげーことを教えてもらっちゃったなと。本当に。
本当びっくりした。
それ以来、そういった形で運転して、いま燃費計で24km/lという、カタログデータをはるかに超える数値が出ていて。
燃費計と若干違うんで給油して割って、実燃費で見てもカタログデータくらいは出ている。21、22くらい。
しばらくやっていて分かったのは、当たり前ですけど給油の回数が減るわけですよ。
タンクが小さいんで20リットルくらいしか入らない。
それで月に3回給油だったのが、いまは2回から3回いかないくらいで済んでる。
だから財布にも優しい、いいことずくめじゃないですか。
Q:デメリットを感じることはありますか?
A:加速していくと、車間が空くけど、最終的にクルージングに入ったときに流れの中に入り込めば交通としては問題ない。
けど、後ろから来るやつがスゴイ勢いで迫ってくることがある。それがやっぱりちょっと。これだけあおり運転って言われているにも関わらず、結構みんな車間つめてくるから、そうするとやっぱ気になっちゃうっていうのはある。そこくらいですね。
頭にはこないですけど、気にはなっちゃう。
そこだけかな。
でも、そんなデメリットを差し引いてもエコドライブはメリットが大きすぎる。
Q:速度に関してストレスを感じるようなことはありますか?
A:とにかく感覚が変わったって言うことがすごいがびっくり。
運転してもう40年近くなるんですけど、そんな感覚になったのは初めて。経験上お分かりだと思いますけど、車好きってどうしてもスピードって求めてしまう。そういう風にしてきて、いかに速く走るかみたいなことしか考えてない。
それで、エコドライブで一つ教えてもらったのが、エコドライブって決して遅く走ることじゃないですよね。
それがすげーと思ったんですよ。
だから普通に流れに乗れるわけですよね。
流れが何キロかっていうのがあるんですけど、全然へろへろ走って邪魔してる訳ではない。そういう意味で言うと、自分の運転を下手くそだと思わない。いまうまく運転できてるみたいな気持ちになってるから、そこも全然ストレスないし、すごいっすね。
Q:多くの方は自分の運転にプライドを持っていたりして、専門家の話を聞いても壁を作って自己流を貫き通してしまうなど、なかなか受け入れられない方もいますが、松山さんはどうしてそこまでエコドライブを受け入れられましたか?
A:やっぱりね、データをたたきつけられたのが大きいと思う。
誰がどう見たってこれダメじゃんってハッキリ分かるじゃないですか。それがやっぱり大きいんじゃないかな。
おっしゃる通り自分もある程度エコドライブをやっている自信はあった。
だから、以前と同じように講習を受けていたとしたら多分変わってないんじゃないかな。
こうやってデータが出て初めて「あ、確かにそうだな、時々急に止まったりするな」とかって思える。
アクセルワークには自信があったので、それほど踏んでるってつもりはなかったけど、それでもやっぱりデータ出されると加速の部分もまだ踏んでるなって分かるし。
一番衝撃なのは減速だよね。こんなに急減速だったの俺?って。
それはスピードが高めなのもあっただろうし、クルージングのときに余裕がなかったんでしょうね。だから減速への切り替えもなめらかじゃなく、(減速度グラフの)勾配がきつくなっちゃったんだろうなー。
そこですよ。多分あれなかったらそこまで変わってなかった。
特にうちはみんな研究者でしょ、科学者なので、データってすごく重要。
人が言うことはすぐには信じないけど。そういう意味では、あのやり方がうちにぴったり合っていた。だからあれだけ改善された。
番外編(インタビュー後談)
車好きの松山センター長。
インタビューの後半は、日本の車社会に対する意見や、自動車の歴史、ご自身の愛車遍歴から、ヒール&トゥーというマニアックなテクニックの話まで車や運転全般の話題で盛り上がりました。
馬車から進化した欧米と、かごから車に変わった日本とでは、ドライバー全体のレベルにも違いがあることや、これからの車は時計になる(スマートウォッチが流行る中、アナログ時計にも良さがありファンがいる)という将来の話まで。
最後に「みんな車を好きになって欲しい」という、松山センター長がいかに車を愛しているかが分かるメッセージを頂きました。