国連エコドライブ宣言(全文・日本語)

国連エコドライブ宣言|エコドライブ研究所

 

前文

自動車は、欠かすことのできないものとして、多くの人々に受け入れられ世界各国で普及が進んでいます。そして、モビリティの向上を通じて人々の暮らしを豊かにしてきたのです。

その一方、モータリゼーションによる環境問題や交通事故が起きたことも事実です。

 

  • 世界中には、約12億台の自動車が存在すると言われており、大量の二酸化炭素(CO2)が排出され、生活や環境に悪影響を及ぼしています。
  • 交通事故の多発:世界保健機関(WHO)のデータによると、2007年から毎年125万人の命が交通事故によって失われています。(2016年ファクトシート)

 

これらの問題に対して、自動車メーカーや多くの研究者は先進技術を駆使し、環境や安全に配慮した自動車を多く開発し続けてきました。特に次世代自動車や先進安全自動車など、環境・安全の両面で飛躍的に技術が進展しています。また、世界的なCO2排出削減には、自動車メーカー・エネルギー供給者・政府・国民が協力し、統合的に取り組むことが必要です。

しかしながら、自動車を取り巻く課題を解決するには、クルマを運転する側にもできることがあるのではないでしょうか。その一つにエコドライブがあります。

エコドライブは、発進時のアクセルワークを滑らかにすることや、減速時にいつもより早めにアクセルを離すといった運転方法を少し変えるだけで燃費が10%向上し、CO2削減や交通事故の低減につながる取組みです。さらにエコドライブによって運転のしかたが変わることで、周りを思いやる気持ちが生まれるのです。そして今までより少し早めに行動を開始することで、ココロのゆとりが持て焦らずにリラックスした運転ができるようになります。これによってストレスが低減し、ココロとカラダの健康につながるのです。

 

なお、この宣言はエコドライブを推進する考え方と精神、更にはその効用を示したものであり、その実践にあたっては、各国の事情に則して対応するものとします。

 

―スコープ―

エコドライブは、ひとり一人が実践できる「ライフスタイル・チェンジ」の一つであり、「ライフスタイルの発展」につながります。そのために考えられる次の3つの要素として、

 

  1. 政府は、低炭素社会を実現するため、健康的で安全な運転を促進する規制の採用を目指します。その規制は、自動車の環境性改善のみに特化したものではなく、自動車の効率的利用とインフラ活用を促進することも含みます。
  2. 産業界と政府による共通方針として、エコドライブを推進します。
  3. ドライバーは、エコドライブの実践を通じて思いやりの意識が芽生えます。その意識変化は、より良い世界を創ります。

 

―エコドライブが目指すこと―

 

エコドライブを実践することでゆとりの気持ちが生まれ、周りを思いやることができ、ものを大切にする思いなどにつながります。

エコドライブは、誰にでも簡単に取り組めるソリューションであり、全世界に広まることでCO2削減・燃費向上・渋滞緩和・交通事故低減などの大きな効果を生み出します。

 

エコドライブの使命

 

  1. エコドライブは、地球の明るい未来に貢献します。
  2. エコドライブは、私たちのいのちを守ります。
  3. エコドライブは、資源の節約に寄与します。
  4. エコドライブは、周囲への思いやりの気持ちを広げます。
  5. エコドライブは、ゆとりの習慣をつくり、心とカラダに健康をもたらします。
  6. エコドライブは、マナーの基本であり、モビリティ社会の健全化を促します。
  7. エコドライブは、いつでもどこでも誰にでも実践できる取組みです。

 

 

1.エコドライブは、地球の明るい未来に貢献します。

私たちは、地球温暖化の原因の一つであるCO2排出量を削減するためエコドライブ(環境に配慮した運転)を推進しなければなりません。

エコドライブを実践すると走行時のエネルギーを節約すると共にCO2を最大15%削減(出展:2015年TML論文)することが可能です。エコドライブは地球の明るい未来のために実践しなければならない取組みの一つなのです。(1)

2.エコドライブは、私たちのいのちを守ります。

世界保健機関(WHO)のデータによると、2007年から毎年125万人の命が交通事故によって失われています。(2016年ファクトシート)エコドライブは、環境に配慮した運転であると同時に、交通事故を大幅に低減できる取組みであることが多くの実績と研究で証明されている取組みなのです。(出展:(2008)『論文集』日本自動車技術会)

3.エコドライブは、資源の節約に寄与します。

エコドライブは、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車、電気自動車など、車種を選ばず実践可能な取組みです。

自動車の技術開発により、燃費は飛躍的に向上してきました。しかし、どんなに燃費の良い自動車でも、運転方法によってその結果は大きく影響されます。

エコドライブは、ドライバー自身が自動車の持つ性能を引き出し、環境と安全、そして資源の節約に寄与する取組なのです。

4.エコドライブは、周囲への思いやりの気持ちを広げます。

エコドライブを実践することで急発進や急ブレーキなどがなくなり、安全な運転につながります。

そして、この行動の変化は、周りへの思いやりにつながるのです。

エコドライブを通じた思いやりは同乗者のみならず、その他のクルマや歩行者にも広がることでゆずり合い精神が生まれ、平和な社会がもたらされます。

5.エコドライブは、ゆとりの習慣をつくり、心とカラダに健康をもたらします。

気持ちが焦った状態で運転を行うと、心拍数が高くなり健康に悪影響を及ぼすという研究結果が報告されています。

運転中に体調不良を起こすと、交通事故を引き起こす要因にもなります。今までより少し早く行動をすることや、焦りそうになっても心に余裕を持つなどの「セルフコントロール」が大切です。

エコドライブを実践し、ゆとりを持った運転をすることでストレスが低減し、健康的な生活をおくることができるのです。

6.エコドライブは、マナーの基本であり、モビリティ社会の健全化を促します。

テーブルマナーなど、多くのパブリックマナーが存在する様に、エコドライブは道路環境をより良くするマナーの1つです。同乗者や横断歩道を歩く人々が安心できるドライブマナーは、モビリティ社会を豊かにします。ドライブマナーには、運転中の不適切な携帯電話の使用といった、脇見運転を控えることも含みます。

7.エコドライブは、いつでもどこでも誰にでも実践できる取組みです。

エコドライブによってあなたの行動が変わり、やがて意識の変化をもたらします。

その変化はゆとりの気持ちをもたらし、ストレスを軽減します。

その結果、どのような状況でも落ち着いて対応できるドライバーになるのです。

エコドライブは運転席という小さなスペースから始まる行動ですが、世界に思いやりの連鎖を広げる大きな取組みなのです。

 

(1)出展:http://www.tmleuven.be/project/aceacars/home.htm

2017年2月 日本自動車工業会・米国自動車工業会・欧州自動車工業会改訂

 

 

エコドライブの実践方法

(エコドライブ10のすすめ)

  1. ふんわりアクセル「eスタート」
  2. 車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転
  3. 減速時は早めにアクセルを離そう
  4. エアコンの使用は適切に
  5. ムダなアイドリングはやめよう
  6. 渋滞を避け、余裕をもって出発しよう
  7. タイヤの空気圧から始める点検・整備
  8. 不要な荷物はおろそう
  9. 走行の妨げとなる駐車をやめよう
  10. 自分の燃費を把握しよう

 

 

1.ふんわりアクセル「eスタート」

発進するときは、穏やかにアクセルを踏んで発進しましょう。(最初の5秒で、時速20km程度が目安です)。日々の運転において、やさしい発進を心がけるだけで、10%程度燃費が改善します。焦らず、穏やかな発進は、安全運転につながります。

2.車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転

走行中は、一定の速度で走ることを心がけましょう。車間距離が短くなると、ムダな加速・減速の機会が多くなり、市街地では2%程度、郊外では6%程度も燃費が悪化します。交通状況に応じて速度変化の少ない運転を心がけましょう。

3.減速時は早めにアクセルを離そう

信号が変わるなど停止することがわかったら、早めにアクセルから足を離しましょう。そうするとエンジンブレーキが作動し、2%程度燃費が改善します。また、減速するときや坂道を下るときにもエンジンブレーキを活用しましょう。

4.エアコンの使用は適切に

車のエアコン(A/C)は車内を冷却・除湿する機能です。暖房のみ必要なときは、エアコンスイッチをOFFにしましょう。また、冷房が必要なときは、車内を冷やしすぎないようにしましょう。たとえば、車内の温度設定を外気と同じ25℃に設定した場合、エアコンスイッチをONにしたままだと12%程度燃費が悪化します。

5.ムダなアイドリングはやめよう

待ち合わせや荷物の積み下ろしなどによる駐停車の際は、アイドリングはやめましょう。10分間のアイドリング(エアコンOFFの場合)で、130cc程度の燃料を消費します。また、現在の乗用車では基本的に暖機運転は不要です。エンジンをかけたらすぐに出発しましょう。

6.渋滞を避け、余裕をもって出発しよう

出かける前に、渋滞・交通規制などの道路交通情報や、地図・カーナビなどを活用して、行き先やルートをあらかじめ確認し、時間に余裕をもって出発しましょう。さらに、出発後も道路交通情報をチェックして渋滞を避ければ燃費と時間の節約になります。たとえば、1時間のドライブで道に迷い、10分間余計に走行すると17%程度燃料消費量が増加します。

7.タイヤの空気圧から始める点検・整備

タイヤの空気圧チェックを習慣づけましょう。タイヤの空気圧が適正値より不足すると、市街地で2%程度、郊外で4%程度燃費が悪化します(適正値より50kPa (0.5kg/cm2)不足した場合)。また、エンジンオイル・オイルフィルタ・エアクリーナエレメントなどの定期的な交換によっても燃費が改善します。

8.不要な荷物はおろそう

運ぶ必要のない荷物は車からおろしましょう。車の燃費は、荷物の重さに大きく影響されます。たとえば、100㎏の荷物を載せて走ると、3%程度も燃費が悪化します。また、車の燃費は、空気抵抗にも敏感です。スキーキャリアなどの外装品は、使用しないときには外しましょう。

9.走行の妨げとなる駐車をやめよう

迷惑駐車はやめましょう。交差点付近など交通の妨げになる場所での駐車は、渋滞をもたらします。迷惑駐車は、他の車の燃費を悪化させるばかりか、交通事故の原因にもなります。迷惑駐車の少ない道路では、平均速度が向上し、燃費の悪化を防ぎます。

10.自分の燃費を把握しよう

自分の車の燃費を把握することを習慣にしましょう。日々の燃費を把握すると、自分のエコドライブ効果が実感できます。車に装備されている燃費計・エコドライブナビゲーション・インターネットでの燃費管理などのエコドライブ支援機能を使うと便利です。

 

この宣言はエコドライブを推進する考え方と精神、更にはその効用を示したものであり、その実践方法は、各国の事情に則して対応するものとします。
日本語版は、エコドライブ普及連絡会(国土交通省、警察庁、経済産業省、環境省)がとりまとめたエコドライブ10のすすめを採用しています。

 

 

 

情報提供:株式会社アスア